不動産鑑定評価
・地代・家賃
土地について、建物所有を目的とした賃貸借契約を新たに締結する場合、地代がいくらになるのか、難しい問題です。土地の売出価格はインターネットでいくらでも調べられますが、借地権の成立を前提とした新規地代の情報は皆無と言ってもいいのではないでしょうか。
あるいは、現在、土地を貸しており、そろそろ地代を上げたいのだけれども、どの程度までならいいのか、皆目検討がつかないというような事態もあるはずです。
さらには、ビルの一階を店舗に貸しているのだが、家賃が周辺と比較して低すぎるので、契約更新時に値上げを申し入れたいというような場合があります。すでにテナントが賃借りしていることから、新規に賃貸するときの賃料の額までは請求できないのが通常ですが、それでも、物件の所在やケースによっては現行賃料の30%あるいはそれ以上の金額が合理的に算出されることもあります。
・借地権と底地との交換
相当の期間経過している借地の賃料は一般に低く、木造の戸建住宅が建てられている場合の年間地代は、地主が支払っている土地の固定資産税と都市計画税の合計額の2.5倍から5倍ぐらいです。
その低い地代を増額するとなると借地人の抵抗があり、また、更新料の授受やその金額もトラブルを引き起こします。借地借家法のなかには、「土地に対する公租公課の増減、土地の価格の上昇や低下その他の経済事情の変動により、または近傍類似の土地の地代に比較して、地代が不相当となったとき、当事者は地代の増減を請求することができる」と記載されています。増減ですから、借地人側からは地代減額の請求もできます。アパートなどの投資物件と比較すると、底地は収益性が低く、元本価値に見合わない不良資産のひとつとも言われています。
そこで、借地権と土地の一部を交換し、借地権を解消することが一般に行われています。土地の所有者にとっては、土地の面積は減少するけれども、自由に使用収益することができる土地を確保することができます。借地人にとっては、利用できる土地の面積は減少するけれども、建物の増改築や地代の増額、更新料などに気を使う必要がありません。
借地権と底地を等価で交換するためには、その前提として、借地権と底地の適正な価格を求める必要があります。客観的な立場の専門家の評価が不可欠です。
・共有物分割
共有物分割とは、例えば、土地を2人以上で共有している場合にその共有状態を解消することを言います。持ち分に応じて分割するのが原則ですが、土地の現物分割の場合、面積按分で単純に土地を分けるのではありません。代金分割であれば、当該共有物を売却してその代金を分割するのですから、もし、50%ずつの持ち分を有する2人の土地を分割するのであれば、分割後の2筆の価値を等価にする必要があります。
土地の価格は、形状、方位、接面街路の幅員及び連続性などの個別的な要因と関係するため、等価に基づく分割は単純ではありません。土地家屋調査士にまず土地を実測してもらい、それを前提に、不動産鑑定士が等価による分割方法をいくつか提案します。どの土地を誰が取得するか、取得する土地についてはどのような利用を考えているか、それぞれの要望を提示し、相互に合意できる分割を協議します。
共有土地の分筆については 共有者の全員で申請する必要があり、分筆後に持ち分の移転登記をします。不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士の合同作業になります。本社がアレンジャーを兼ねますので、等価分割の提案、測量、分筆、所有権の登記まで手配致します。
・親族間の不動産譲渡
父親が所有している土地付きアパート(例えば、年間総収入300万円)を子供が購入する場合があります。父親がその後20年間生存し、年間総収入300万円が継続するとした場合、時間による割引価値を考慮外とすれば、結果的に、その売買により3,600万円のキャッシュが子供に贈与されたことになります。もし、その土地付きアパートを2,000万円で売買できるとしたら、あるいは、将来その土地の値上がりが見込めるならば、有効な相続対策になるかもしれません。ただし、親族間の売買や関係企業間の売買は市場を通さないため、登記上の所有権を移転したあとに、売買価格の根拠について、税務署から尋ねられることがあるので注意が必要です。
市場において交換される適正な価格で売買すれば問題はなく、その根拠としては不動産鑑定士による評価が最も効果的です。税理士との共同作業になります。
担保評価、遺産分割、減損会計、株価算出、現物出資、不動産の交換、親族間の売買、共有物分割、相続税の時価申告、再開発の権利変換、継続賃料など、交渉やトラブルラブルの解決のためのツールとして、あるいは税金対策として、不動産の鑑定評価が効果的です。